院長の日記

　今月の15日をめどに父の経営している鉄工所を閉鎖することなりました。

　もともと今年の元旦に家族の前で「今年いっぱいで鉄工所を閉めようと思う」という話はしておりましたが、さらに春に癌が見つかり、4か月近く入院。その間に体が一回り小さくなって体力も落ちてしまったこともあり、計画通り鉄工所を閉鎖し売却することになりました。

　父の鉄工所は『新晃鉄工』という名前です。『新晃』というのは父と母が考えた名前で、僕も小さいころから大好きな名前でした。
　
　新晃鉄工ができたのは僕が小学3年の時。夏休みに母が作ってくれたお弁当を持って、父が鉄工所を建てるのを毎日手伝ったのをとてもよく覚えています。この時の壁に書かれた『新晃鉄工』の文字は僕が書いた文字です。それを見るたびにとてもうれしい気持ちになりました。

　そして僕が大学に合格した平成４年に今の場所に移転しました。

　僕には姉が2人いますが息子は僕1人です。ですから本来であれば僕が後を継ぐべきだったのかもしれません。もし一言でも父がそのことについて僕と話をしていたら歯学部ではなく工学部に進んでいたかもしれません。父は父なりに僕の進路を自分で決めてほしかったのだと思います。本当に一切「鉄工所を継いでほしい」とか「継がないか」といった話はありませんでした。

　そして結局、父とは違う道に進みましたが、父と母が付けた『新晃』の名前だけは継ぎたいと昨年歯科医院を法人化し、『医療法人新晃会』と名付けました。

　父は仕事が生き甲斐の男ですのでこれから一気に老けてしまうのではないかと心配ですが、母と一緒に旅行でもしながら新しい趣味を見つけてくれたらと思います。

　長い間お疲れ様でした。そしてありがとうございました。